研究概要 |
本研究の始めにあたり、ヒト膀胱癌由来培養細胞株、KUー1に対し各種濃度のメトトレキセイト(MTX)を接触させ、フロ-サイトメトリ-によるDNA/bromodeoxyuridine(DNA/BrdU)二重染色解析法による抗癌剤感受性テストとしての可能性につき検討した。MTX接触24時間後にDNA/BrdU解析を行い、同等の濃度のMTXと接触させた細胞の72時間後の殺細胞効果をトリパンブル-法による結果と比較検討した。方法はMTX接触細胞のBrdU標識細胞率よりMTX非接触細胞のBrdU標識率を減じこれをMTX非処理細胞のBrdU標識率で割った数をS期インデックス(SPI)とし、これをトリパンブル-法による殺細胞効果と対比した。MTX濃度、0.5,1.0,5.0,10mcg/mlにおけるSPIは10.0±2.0,40.0±4.4,61.0±4.4,69.0±2.4,であり、同濃度における%殺細胞効果は7.0±2.7%,19.0±3.6%,71.0±4.1%,73.0±2.7%であり、SPIと%殺細胞率は良好に相関した。このことはDNA/BrdU解析がMTXの殺細胞効果を予測する客観的指標として有用であるものと考えられた。さらにこの方法を実際に臨床応用するために、ヒト膀胱癌組織におけるDNA/BrdU検索を行った。100例の膀胱癌組織におけるBrdU標識率は平均9.6±7.9%であり、これを組織学的悪性度別に検討すると、grade1,4.8±3.0%,grade2,8.5±7.0%,grade3,15.7±8.9%と悪性度が高い腫瘍においてBrdU標識率の高値が認められた。このことは、膀胱癌において抗癌剤投与の主な対象となるhigh grade腫瘍において、本法が適応可能であることを示すものであると考えられた。
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