研究概要 |
ヒトパピロ-マウイルス(HPV)は子宮頸癌の発生に深く関与していることが知られている。特にHPV16型18型のE_6/E_7遺伝子が発癌に不可欠であることが実験的に証明されている。そこで,我々は,癌への形質転換を若起するHPV16型E_6/E_7遺伝子蛋白を作製し,癌患者が持つこれら蛋白に対する血中抗体の測定系を確立し,臨床応用の可能性について検討することを目的とした。初年度において,HPV16型DNAのE_6E_7領域をコ-ドする遺伝子を含む領域(E_6はDdeI,RsaIによりDNA断片,E_7はSau3UAI Nco1によるDNA断片)を切り出した。これらを,s10とのfusion蛋白を作製するため,発現ベクタ-(pET,pARA)のBam H1 siteにlinker ligation法により挿入した。次にこのhybrid DNAを大腸菌XLー1ーBlueにトランスフェクトした後,IPTGによる誘導によって目的のfusion蛋白を産生するクロ-ンを得た。次年度において,fusion蛋白を用いて抗体のELISA法による測定系を確立した。Fusion蛋白は塩析法で精製しその特異性はそれぞれの特異抗体に対する反応性によって確かめた。s10ーE_6は17.5Kd,s10ーE_7は16Kdであり,s10ーproteinAーE_6は49.5Kd s10ーproteinAーE_7は47.Kdの分子量を示した。これら蛋白をプレ-ト上にコ-トし,患者血清を3時間反応させるELISA法で血清中の抗体価を測定した。カットオフ値はmean+3SDとした。38人の健常人では陽性を示すものはなかったが,CINIII患者では抗E_6抗体陽性者は5/26例(19%)抗E_7抗体は2/26例(8%),癌患者では抗E_6抗体は8/30例(27%),抗E_7抗体は10/30例(33%)が陽性であった。これらの抗体はwestern blotting,Immunoprecipitationによって特異性も確かめられた。子宮頸癌患者血清中にHPV16型E_6E_7蛋白に対する抗体が存在し,Tumor Markenとに臨床応用の可能性が示された。
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