研究概要 |
脱落膜中のリンパ球は胎児の子宮内への生着に関し免疫学的に重要な役割を演じていると考えられ,この点の解明を目的として研究を行なった。まず,脱落膜中のリンパ球分離法に関し,細切法,メッシュ法,各種酵素および比重遠心法など方法を適宜組み合せて検討した。その結果,(方法1)細切,メッシュ法,パ-コ-ル2段階比重遠心法(方法2)細切,酵素法,パ-コ-ル2段階比重遠心法の2つの方法でリンパ球の抽出が可能であることが確認された。この2法の比較すると,分離できるリンパ球の数では(方法2)の方まさっていたが細胞の表面抗原の変化を最少にし得る点では,(方法1)が優れていた。 上記の(方法1)で集めた脱落膜中のリンパ球をモノクロ-ナル抗体と反往させ,その表面抗原をフロ-サイトメトリ-で分析した。その結果,脱落膜中にはNK細胞に多く認められるマ-カ-であるCD56を非常に強く発現している末梢血中にはあまり認められないタイプのリンパ球が過半数を占めていることが確認され,母体と胎児組織その接点である脱落膜は免疫学的に特異な状態にあることが示された。今後はこのリンパ球の特徴および機能についてレセプタ-,サイトカインの産生能,キラ-活性などを分析し妊娠機構から見た役割について検討を行なう予定である。 また,脱落膜リンパ球の10ー20%を占めるTリンパ球(CD3^+)は,正常妊娠例および流産例の双方において活性化された状態(HLAーDR^+)で存在し,妊娠の維持,流産において重要な役割をになっていると考えられる,その活性および機能についても検討を加える予定である。
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