内因性有機酸は摂食現象の中枢である視床下部に作用して、食欲の調節を行うと考えられているが、視床下部は性周期を発現させる視床下部ー下垂体ー卵単系の中枢でもあり、これら摂食調節物質である内因性有機酸が、摂食調節ばかりでなく視床下部ー下垂体ー卵巣系に対しても影響を及ぼし、神経性食欲不振症患者や体重減少性無月経患者などでの視床下部ー下垂体ー卵巣系機能抑制の原因となる可能性を検討した。 本年度の研究ではラットを用いた動物実験系を使用して、内因性摂食調節物質である2ーbutenー4ーOlide(2ーB40)の主としてin vivoにおける性周期や性機能に関係した臓器に対する影響に関する検討を行った。また下垂体からのLHのパルス状分泌に対する2ーB40の影響を調べた。さらに、視床下部ー下垂体ー卵巣系への影響の作用機序、部位の検討のためにラット視床下部ー下垂体周辺還流系を用いたin vitroの実験を行った。 その結果、2ーB40は視床下部ー下垂体ー卵巣系に影響を及ぼし、ラットの性周期を抑制することを明らかにできた。すなわち、in vivoの実験として、ラット腹腔内に2ーB40を慢性投与すると、その性周期が乱れ下垂体、子宮、卵巣などの性機能に関した臓器の重量が低下し、さらに下垂体のゴナドトロピン含有量が低下した。また2ーB40のラット腹腔内慢性投与により下垂体からのLHのパルス状分泌の頻度が有意に低下した。一方、ラット視床下部ー下垂体周辺還流系を用いたin vitroの実験から、2ーB40が下垂体に働いてゴナドトロピンの分泌を抑制することを明らかにした。 以上から、内因性摂食調節物質である2ーB40は視床下部および下垂体に作用して、ゴナドトロピンの分泌を抑制することにより性周期を抑制することが判明した。
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