研究概要 |
1.内因性抗腫瘍性リンホカインの検出法の確立について。基礎実験としてHuman Tumor Clonogenic Assay(HTCA)では抗腫瘍剤による腫瘍細胞の増殖抑制のdose responseが再現性良く観察された。これに対し、MTT assayでは抗腫瘍剤または抗腫瘍性リンホカインによる細胞障害効果は、観察は可能ではあるが定量性の再現性に乏しく今後の研究に応用していくことは困難であると考えられた。したがって、今年度の研究においては二重軟寒天培地の下層にリンパ球を封入し、上層に標的細胞としてHela細胞を封入したHTCAのみを用いて抗腫瘍性リンホカインの検出を施行した。2.計18症例の子宮頚癌手術時に採取された転移の無いリンパ節よりリンパ球を分離した。リンパ球の分離は比重遠心法を用いて行ったが、一つのリンパ節より1x10^7〜1x10^8個のリンパ球が得られた。3.リンパ節リンパ球の抗腫瘍性リンホカイン産生の誘導について。リンパ球の刺激物質としてPHA,ConーA,PWN,ILー1,ILー2,OKー432を使用したが、これらのうち上層のHela細胞の増殖抑制効果を再現性良く誘導したのはPHA,ConーAのみであった。リンパ節リンパ球のうちHela細胞の増殖抑制効果を示したのはプラスチック非接着性のリンパ球でありT細胞と考えられた。Hela細胞の増殖抑制効果は二重軟寒天培地に封入したリンパ球の数と正の相関を示した。刺激されたリンパ球培養上清中の種々のリンホカインをRIAにて測定したところ、IFNーα,IFNーγ,TNFが出現していた。無刺激のリンパ節リンパ球はHela細胞の増殖抑制効果を全く示さず、またその培養上清中に前期のリンホカインは検知できなかった。更に、中和抗体を用いた実験によりこの実験系で抗腫瘍性を発現していたリンホカインはIFNーγであることが判明した。4.今後の展開。Hela細胞を標的細胞とした今年度の実験系ではリンパ球より産生されるIFNーγが抗腫瘍性リンホカインとして着目された。今後、TNF等の他のリンホカインについての検討および標的細胞を他のcell line或はヒト初代培養細胞とした場合の検討が必要である。また、抗腫瘍性サイトカイン産生のkinetics,細胞内産生機序についても次年度研究を行う予定である。
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