研究概要 |
今年度は主として、リンパ節リンパ球と末梢血リンパ球の抗腫瘍性サイトカイン産生能の比較検討を行った。 1:リンパ球由来内因性抗腫瘍性リンホカインの検出:子宮頚癌手術時に採取された転移の無いリンパ節より得られたリンパ球(LNL)および末梢血リンパ球(PBL)をHTCA二層軟寒天培地の下層に封入し上層のHela細胞の増殖に対する効果を観察した。無刺激のリンパ球は1x10^4/mlから1x10^6/mlの密度ではHela細胞の増殖に対し影響を及ぼさなかった。これに対しPHA,Conーaで刺激したLNL,PBLはいずれも3x10^5/ml以上のリンパ球密度に於て、密度依存性に上層のHela細胞の増殖を抑制した。2:PBL,LNLいずれも刺激物質についての検討を行った。PHA,ConーA,PWN,ILー1,ILー2,OKー432を使用したが、いずれのリンパ球に対してもPHA,ConーAが再現性良くHela細胞の増殖抑制効果を誘導した。ILー2はLNLに対しては全くHela細胞増殖抑制の誘導効果を示さなかったが、40%の症例においてPBLに対しては軽度のHela細胞増殖抑制の誘導効果を示した。3:PBL,LNLの培養上清中のIFNーα,β,γ,TNFーαを測定した。無刺激のPBL,LNL培養上清中にはいずれのリンホカインも検出できなかった。しかし、PHAにより刺激されたPBL,LNLはいずれもその培養上清中にIFNーγ,TNFーαが検出された。IFNーγの濃度はLNLにおいてPBLに比し高値を示す傾向が認められた。4:Hela細胞のIFNーγ,TNFーαに対する感受性を検討したところIFNーγに対しては濃度依存性の感受性を示したが、TNFーαに対しては10000pg/mlの濃度においても増殖抑制効果を示さなかった。以上の結果および前年度のIFNーγ,TNFーαに対する中和抗体を使用した実験結果よりPBL,LNLは抗腫瘍性サイトカインとしてIFNーγ,TNFーα両者を産生しているが、この実験系においてHela細胞の増殖抑制効果を発現しているのはIFNーγであると考えられた。
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