研究概要 |
性機能調節上重要な役割りを果たしているGnRHの産生,分泌機構を明らかにするため,ラット視床下部と卵巣におけるGnRH遺伝子の発現を検討することを目的とした本研究のうち,平成2年度は視床下部について分析した。 すでに我々が作成したRNAプロ-ブを用いて,ラット脳におけるGnRHmRNAのNorthern blot およびin situ hybridizationを試みた。まず,ラット脳より抽出したmRNAを用いてのNorthern blottingの結果では,約500塩基対の位置にGnRHmRNAの単一バンドが認められた。これは,ラット視床下部のGnRHmRNAのサイズが約500塩基対であると報告したAdelmanらの結果とも一致しており,今回作成して用いたoligoRNAプロ-ブが,ラットGnRHmRNAを検出可能であることを示している。一方,ラット脳でのin situ hybridizationでは,前額断切片で観察すると,対側角の部位のneuroneに銀粒子の明らかな集績が認められた。また,視索前野の領域のneuroneにも同様に,明確な銀粒子の集積がみられた。以上の観察から,これらの細胞がGnRH を合成しているneurone であることが同定された。弓状核にはGnRH産生細胞は認められなかった。 以上の基礎的検討に基づき,ラット性周期による GnRHmRNAの動態や,性ステロイドホルモン投与によるその変動についても検討を開始したが,まだ結論を出すだけの十分な成績を得ていない。 In situ hybridizationによるGnRH産生細胞の脳内分布は,免疫組織化学的手法による,これまで発表された結果とほぼ一致するものであった。
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