本研究は、諸物質の精子運動に対する影響を定量的に評価し、臨床応用可能な精子運動賦活物質を検索、選定することを目的としている。 現在利用可能な精子運動解析装置(HMT2030)の精度を検討した結果、本紙は精子、非精子(精液中の他細胞、粒子等)の画像上の分別認識能が低く、精子運動の定量的解析には他細胞、粒子等を除去した精子懸濁液を作成する必要があることが判明した。さらに精子に対する作用物質の影響を検討する際、精子懸濁液への精漿の残存、特に精漿蛋白分解酵素残存はペプチド性生理活性物質の検討を不可能にする。そこで研究の基礎般階として、精子運動解析に供する他細胞、粒子、精漿因子等を含まない高純度精子の精製を試みた。その結果、ガラスキャピラ-ルを用いた密度勾配遠心分離法を確立した。また細胞培養液(Ham FIO等)による希釈はそれ自身が精子運動を賦活するため、精子運動に影響しないMinimum Sperm Medium(MSM)の開発もおこなった。 以上、確立した精子運動の客観的評値法を用いてエンケファリン、アドレナリン、ブラジキニンなどのペプチド性生理活性物質が精子運動を賦活することを観察した。またカフェイン誘導体であるペントキシンフィリンは精子運動を賦活するのみならず、精子の浸透圧変化に対する抵抗性を強化することは見いだした。さらに生体内医薬の観点から、血漿、精漿、卵胞液中に存在する精子運動賦活因子に検索も試みている。
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