1)動物実験で蝸牛遠心性神経活動の評価を短時間で行うための測定装置の構築を行った。この装置はコンピュ-タ制御で、蝸牛内電気現象とそれに伴う耳音響放射を極めて高精度に検出記録する事ができる。またヒトでの計測も同様に行える。 2)遠心性支配神経は、蝸牛内で動的な機械系の制御によって音受容の調節を行っているという考え方が有力であるので、この動的機械系の動作に最も密接に関連した現象である耳音響放射に対象を絞って、モルモットとヒトでこの現象の詳細な検討を行った。 3)その結果、モルモットでは従来極めて稀な現象であるといわれてきた自発耳音響放射を20%以上の高率で検出し、その基本的性状に関する有益なデ-タを数多く明らかにした。その中には世界で初めて明らかになった知見も多く含まれており、英文論文としてHearing Research誌に投稿中である。 4)耳音響放射の一つであるが、検出法が特殊なため本邦においては研究が行われていなかったsynchronous evoked emissionの計測を日本で初めて集中的に行い、ヒトとモルモットの相違という観点から考察し日本基礎耳科学会において報告した。現在論文として発表準備中である。 5)次年度の研究の中心となる遠心性支配神経活動の評価実験のための基礎実験を行った。遠心性支配神経の刺激下に耳音響放射の観測を行うことで、この系の機能の核心に迫る情報が得られる見込みである。
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