動揺病の慣れの現象と学習・記憶

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670763
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 武田 憲昭 大阪大学, 医学部, 助手 (30206982)
• 研究分担者: 松永 亨 大阪大学, 医学部, 教授 (10101271)
• キーワード: 動揺病 / 慣れ / アセチルコリン / 学習 / スコポラミン / 抗コリンエステレ-ス

研究概要

本研究の目的は、我々のラットを用いた動揺病の動物モデルを用い、動揺病の慣れの現象におけるアセチルコリン神経系の関与を検討することである。本年度はまず抗コリン薬およびコリン作動薬のラットの動揺病の慣れの現象に及ぼす影響を検討した。ラットを1日1回、1時間の回転刺激(ダブル・ロ-テ-ション)を与えるとおよそ9日目あたりから、ラットの動揺病の指標であるカオリン摂取が現象してくる。これは、ラットが回転刺激に慣れ、その結果ラットの動揺病の程度が減少したものと考えられる。ラットの動揺病の感受性により慣れの起こり方に差があることから、主に高度受性のラット群を実験に使用した。抗コリン薬であるスコポラミンの経皮吸収剤であるTTSースコポラミンを回転第4日目から7日目の間ラットの耳介に張り付けるとラットの動揺病は抑制された。さらに、TTSースコポラミンを取り除いてもラットの動揺病は抑制されたままであった。この結果はスコポラミンが回転刺激によりラットの動揺病の慣れの現象を促進したと考えられる。一方、コリン作動薬であるフィゾスチグミンを回転第4日目から7日目の間ラットに皮下注してもラットの動揺病は変化しなかったが、その後の回転刺激によりカオリン摂取は減少せず、フィゾスチグミンは逆にラットの動揺病の慣れの現象を抑制したと考えられる。しかし、末梢のみに作用するコリン作動薬であるネオスチグミンは慣れの現象には影響を与えなかった。以上の結果から、中枢のアセチルコリン神経系が動揺病の慣れの現象に関係していることを明らかにできた。次に、本研究費助成金によりデビット・コップ社の脳定位装置を購入し、脳内の主要アセチルコリン神経系の起始核であるマイネルト核や内側中隔核、ブロ-カ-の対角核を両側性に電気破壊を行ったが、動物が死亡したり衰弱する例が多く、本研究には適切な方法ではないことが分かった。

研究成果

• [文献書誌] Morita M,Takeda N,Hasegawa S,Yamatodani A,Wada H,Sakai SーI,Kubo T,Matsunaga T: "Effects of antiーcholinergic and cholinergic drugs on habituation to motion in rats" Acta OtoーLaryngologica. 110. 196-202 (1990)
• [文献書誌] Takeda N,Morita M,Yamatodani A,Wada H,Matsunaga T: "Catecholaminergic responses to rotational stress in rat brain:implications for amphetamine therapy of motion sickness" Aviation Space Environmental medicine. 61. 1018-1021 (1990)
• [文献書誌] 武田 憲昭: "動揺病と中枢神経" JOHNS. 6. 1197-1201 (1990)
• [文献書誌] Takeda N,Igarashi M,Koizuka I,Chae SーY,Natsunaga T: "Recovery of the otolithーocular reflex after unilateral deafferentation if the otolith organs in squirrel monkey" Acta OtoーLaryngologica. 110. 25-30 (1990)
• [文献書誌] Himi T,Igarashi M,Takeda N: "Effect of vestibuloーcerebellar lesions on asymmetry of vertical optokinetic functions in the squirrel monkey" Acta OtoーLaryngologica. 109. 188-194 (1990)
• [文献書誌] Tanaka M,Takeda N,Tohyama M,Matsunaga T: "Immunocytochemical localization of motochondrial and cytosolic aspartateam inotransferase isozymes in the vestibular endーorgans of rats." European Archives of OtoーRhinoーLaryngology. 247. 119-121 (1990)