研究概要 |
咽頭食道遊視法による嚥下機構の定量的解析:本年度は主として嚥下機構の加齢変化を検討した。造影剤には液体造影剤(硫酸バリウム)に加えて、負荷試験法として固形造影剤を試作し,検討した。定量的解析は透視像をデジタル・フルオログラフィに導入し行った。造影剤の複動時間,喉頭および舌骨の動きについては加齢の影響は認められなかった。しかし,高齢者では咽頭分割嚥下,喉頭流入,喉頭蓋の運動制限などが観察され,とくに固形造影剤の嚥下分析では咽頭反射の低下を診断するのに有用であった。また,固形造影剤による分析は軽微な嚥下障害の同定に有用で,とくに食道入口部通過時間の延長が特意な所見であった。 嚥下圧,筋電図測定による嚥下機構の定量的解析:嚥下圧の生成機序を筋電図との同時測定で検討し,以下のことが明らかになった。嚥下中枢のプログラム機構の解析には嚥下圧伝搬曲線の応用が有用であった。食道入口部の弛緩時間は咽頭側と食道側で異なり,入口部の弛緩状態を解析するには咽頭側の嚥下圧を測定すべきであると示唆された。 嚥下機構の総合評価に関する研究:嚥下機構の総合評価法として,本年度は嚥下機構に及ぼす加齢の影響と診断パラメ-タ抽出法について検討を加えた。その結果,軽微な嚥下障害の診断には固型造影剤を用いた負荷試験の導入が必要であること,加齢の影響は定量的分析では明らかにされるいが,造影剤の動き,嚥下関与器官の定性的分析が重要と考えられた。とくに嚥下反射の低下,咽頭の駆動力低下は固形剤嚥下で,喉頭流入と喉頭蓋の運動制限は液体造影剤の嚥下で明らかにされる。嚥下中枢のプログラム状態は嚥下圧伝搬曲線で,嚥下駆動力は嚥下圧曲線法で,診断が可能であり,食道入口部の弛緩状態の診断には同部の咽頭側で内圧を測定する必要のあることが明らかにされた。
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