研究概要 |
1)クリック音によって誘発される正常耳の誘発耳音響放射(EOAE)は,通常0.5kHzから5.0kHzの周波数域に存在する。しかし,主なechoは,1.0kHzから2.0kHzに集中する。 2)100Hz狭帯域EOAE分析によると,echoは10msecより短い潜時を持ったecho群(fast component)と,10msecより長い潜時を持ったecho群(slow component)から主に構成される。 3)これらのecho群を周波数の面より見ると,fast componentは1kHzより高い周波数領域で,slow componentは2kHzより低い周波数領域に存在する。 4)これら二つのecho群の入出力特性はともに非線形性を示すが,検出閾値,飽和する音圧で大きく異なる。既ち,fast componentは検出閾値が高いが,より大きな音圧で飽和し,slow componentは検出閾値は低いが,より小さい音圧で飽和する。 5)これら二つのecho群では,slow componentがより受傷性が高い。 6)Tone Pipで誘発されるEOAEの出現様式も,クリニック音によって誘発されるEOAEの出現様式と極めて類似し,主な構成エコ-はやはりfast componentとslow componentであった。 7)Tone Pipの周波数がエコ-に及ぼす影響を検討すると,周波数が0.5kHzから4.0kHzと高くなるにつれて,fast component,slow componentとも潜時は短縮する傾向を,それ以降は逆に延長する傾向を示す。 8)Tone Pipの持続時間が及ぼす影響は刺激周波数が低い場合は,持続時間の長さに比例して潜時の延長がみられるが,2kHz以上の周波数域では著明な変化は示さない。
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