誘発耳音響放射の臨床応用の可能性を探るため、突発性難聴40耳とメニエ-ル病28耳に100Hz狭帯域EOAEを施行、これら疾患でのEOAEの特徴を検討して以下の結論を得た。 1)突発性難聴について A)突発性難聴の100Hz狭帯域EOAEは、短い潜時を持ち、かつ低い周波数成分のECHOが残存し易い。そして、回復期では、通常短い潜時のECHOから長い潜時のECHOが、また低い周波数成分からなるECHOより高い周波数成分のECHOが出現・回復する傾向を持つ。 B)100Hz狭帯域EOAEは、発症1ケ月までは、平均聴力が(6分法)50dB HLを越す中・高度難聴でも、検出できる場合が多いが、発症1ケ月を越すと検出率は著明に低下する。一方、難聴の程度が平均聴力(6分法)で50dB HL以下の場合では、検査時期に関わらずEOAEは検出可能であった。 C)発症1週目までにSlow component、Fast componentが共に検出出来た場合は聴力予後はきわめて良く、2KHz以下の中・低音域では20dB以内の良好な聴力に回復した。 2)メニエ-ル病について A)メニエ-ル病の誘発耳音響放射の障害は潜時の長いechoより出現し、echoの持続時間は短縮する傾向にある。 B)よって、初期メニエ-ル病では、潜時の長いSlow Componentの振幅が減少し、毘つ検出閾値も上昇、echo波形はFast Componentーdominant型を示す。 C)障害が進んだメニエ-ル病では、echoの出現範囲は更に短縮し、Fast componentのみとなりecho波形はSlow component loss型を示す。 D)更に、障害が高度に達するとFast Componentも高い周波数成分より消失し、最終的には無反応になるものと考えられた。
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