研究概要 |
1)ICRマウスを用いて.GermーFree(GF),specific pathogen free(SPF),Conventional(CV)のそれぞれ異なる環境で飼育し8週令のマウスの内リンパ嚢周囲組織における免疫担当細胞の分布を見た。その結果、鼻腔粘膜に比べ抗原刺激の少ないとされる中耳粘膜ではCVマウスでIgA,IgM,Lytー1陽性細胞のみが散見され、SPFやGFマウスでIgM陽性細胞が僅かにみられたが、中耳よりもさらに抗原刺激の少ない内リンパ嚢周囲ではGFやSPFマウスではリンパ球はほとんど見られずCVマウスにおいても少ないながら染色した結果、IgM陽性細胞が一部同定されたのみであった。以上の結果は、抗原刺激を受けていない内リンパ嚢周囲には分化成熟した免疫担当細胞は存在しない事を示唆し、内リンパ嚢が内耳に微生物等の異物の侵入に際し、即時に局所免疫応答をしうる組織で無いことが示された。 2)ヒヒより得られた側頭骨を用いて内リンパ嚢に液性免疫さらに粘膜免疫機構が存在するがどうか検討した。死後直後のヒヒより側頭骨を採取しホルマリン固定後、内リンパ嚢を顕微鏡下に分離し、気管粘膜を陽性コントロ-ルとして抗ヒトIgG,IgM,IgAポリクロ-ナル抗体および抗ヒト分泌因子抗体を用いてABC法で免疫染色を行った。その結果、内リンパ嚢上皮下の結合織にIgGが染色されたがIgMやIgAは染色されなかった。上皮および他の部位に分泌因子は染色されなかった。内リンパ嚢周囲組織においてもIgG保有リンパ球は散見されたもののIgMやIgAを保有するリンパ球は無かった。これらの結果は、内リンパ嚢は免疫的に液性免疫のコントロ-ル下にはあるものの、気道や消化管に存在する粘膜免疫は内リンパ嚢には備わっていない事を示唆した。
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