研究概要 |
角膜ヘルペスにおける生体免疫系の動きを検討するために,マウスヘルペス性角膜災モデルを用いて以下の検討を行った.実験にはBALB/Cマウス,ウイルスとしてCHR3株を使用した. (1)角膜内のウイルス抗原および主要組織適合性抗原の動き 免疫組織化学的手法により,角膜内におけるウイルス関連抗原,主要組織適合性抗原の動態を検討した.接種早期に角膜上皮に存在したウイルス抗原は,感染後5日までには角膜実質細胞にまで分布が拡大した.一方,クラスII抗原について検討すると,まだウイルス感染の生じていない時期にすでに角膜実質細胞に陽性所見がみとめられた.上皮細胞については発現は認められなかった. (2)局所リンパ節および角膜におけるリンパ球サブセット FACSにて感染後の局所リンパ節細胞のサブセットを検討した.感染早期よりL_3T_4細胞とLyt_2細胞の増加が著明に認められ,1週後にはリンパ節細胞数は約10倍となった.この動きと同期して,角膜内にもL_3T_4細胞とLyt_2細胞の浸潤が著明となった. これらの事実より,角膜ヘルペスにおいては,ウイルス感染の開始とともに局所リンパ節において免疫反応が開始され,ウイルス感染の進行とともに角膜内に浸潤してくるものと推察された.感染早期に実質細胞がクラスII抗原陽性となる点は非常に興味深く,感染初期の局所免疫に重要な役割を果たしている可能性があり,今後の検討が必要である.
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