研究概要 |
角膜ヘルペスに対する有効な治療法を確立するには,まずウイルス感染に続発して生じるウイルス抗原,組織適合性抗原の発現様式,抗原と反応する免疫担当細胞の動態を把握する必要がある.平成3年度においては,以下の3点について研究を進めた. (1)角膜ヘルペス感染マウスの角膜,局所リンパ節についてクラスIおよびクラスII組織適合性抗原,ウイルス抗原,および浸潤T細胞の動態について免疫組織化学的に検討した.ウイルスは最初上皮において増殖し,その後実質へと進展した.これに伴いL3T4,やや遅れてLyt2陽性細胞が角膜実質内へと浸潤してきた.角膜実質細胞に感染の初期からクラスII抗原の発現が認められた.また,感染の進行とともに局所リンパ節が腫大し,1週後には感染前の約10倍に達した.感染とともに出現するクラスII抗原が免疫反応の誘導に関与していることが示された. (2)遅延型過敏反応の抑制が角膜ヘルペス感染の臨床像に及ぼす影響を検討した.あらかじめマウスの前房内にウイルス抗原を投与して遅延型過敏反応を低下させておくと,角膜実質炎の程度はコントロ-ル群と比較して軽度であった.また,ヌ-ドマウスを用いた細胞移人実験においても同様の結果が認められ,角膜実質混濁における遅延型過敏反応の関与が明らかとなった. (3)より自然な角膜ヘルペス感染モデルを作成する目的で,種々の純系マウスにウイルスを点眼接種し,その臨床経過を観察したところ,角膜炎の発症頻度がマウスの系統により大きく異なることが判明した.ウイルス受容体,初期免疫防御機構,角結膜における自然防御機構などの関与について現在検討中である.
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