研究概要 |
1。各種スルフォンアミドと炭酸脱水酵素IIとの結合の仕方と薬理作用の違いーーーー酵素とアセタゾラミド(5員環であるチアジアゾ-ルスルフォンアミド)およびスルフォニルアミド(6員環であるベンゼンスルフォンアミド)との結合の仕方が異なることが核磁気共鳴スペクトルの解析の結果分かった。前者(アセタゾラミド)の場合,活性中心である亜鉛以外に,11個あるヒスチジン残基のひとつ(Hisー64と推定される)と結合するが,後者(スルファニルアミド)の場合,ヒスチジン残基と直接に相互作用する証拠は得られなかった。前者(50%阻害濃度=0.38×10^<-7>M)は後者(50%阻害濃度=5.4×10^<-6>)より安定な複合体を作る。このことは眼圧降下作用(健常ウサギに0.02mmole/kg投与した場合,アセタゾラミドでは眼圧が72%に低下するが,スルファニルアミドでは殆ど低下しない)にも反映している。なお,チアジアゾリンスルフォンアミドであるメタゾラミドもアセタゾラミドと同様の結合の仕方をすることが分かった。 2.ヒスチジン残基のイミダゾ-ルの水素核に由来する核磁気共鳴信号の一次構造への帰届(進行中)ーーーー酵素を重水中に置き各ヒスチジン残基の重水素化速度を核磁気共鳴の経済的観察から算出し,その後,酵素を限定加水分解して質量分析によって各ヒスチジン残基の重水素化率を測定し,両者の比較によって帰省作業をすることにした。重水素化速度の測定にあたって,正確にヒスチジン由来の信号の強度を測定するために,一度酵素を重水中で変性させて,しかる後,再度,高次構造を取り戻させる必要があることが分かり,その条件(6Mグアニジンで変性させる)を決定した。また,限定加水分解の条件(0.5M酢酸中で110℃で14時間加熱する)と,限定加水分解物の高速液体クロマトグラフによる分取の条件(ODSカラムを使用する)を決定した。
|