1。未変性の(高次構造を有する)アイソザイムIIを弱塩基性の重水中におき各ヒスチギン残基の重水素化速度をNMRで測定し、さらに重水素化されたこの酵素を限定加水分解して質量分析で重水素化率を測定し、両者を比較してヒスチジン残基由来のNMRシグナルを一次構造に帰属させる作業を平成2年度に続いて行った。平成2年度で決めた0.5M酢酸による分解条件をさらに検討すると、この条件では正確な定量を行うことができないことが分った。そこで、現在V8プロテア-ゼ(あるいはプロリン特異性ペプチダ-ゼ)とトリプシンとを組み合わせて行う方法を検討している。2月末現在、完全な条件決定に到っていない。また、質量分析は当初MS/MS法で行う予定であったが、同位体ピ-クのうまい処理方法が見つからず、リンクド・スキャン法で試料の娘イオン(フラグメント・イオン)を測定することを検討している。 2。アセタゾラミドとヒスチジン残基との相互作用の存在を直接示す指標として、アセタゾラミドのアセタミド基のメチル基とヒスチヂンのイミダゾ-ル核のC_2Hとの間の核オ-バ-ハウザ-効果のスペクトルがとれた。このことより、アセタゾラミドはアイソザイムIIと複合体を作った場合、そのアセタミド基は11個のヒスチジン残基のうちの一つと極く近いところに位置することが分った。 3。分子力学計算を綿密に行って、アセタゾラミドとアイソザイムIIとの複合体では、少くとも2つの構造をとることができることが分った。一つは、アセタゾラミドのアセタミド基がHisー64に向いている構造(2。の結果を支持する構造)であり、もう一つはPheー131の方を向いている構造(X線回析の結果を支持する構造)である。 4。アイソザイムIIについての実験が予定を越えて長引いたために、アイソザイムIについての実験は、成果をあげるまでに到っていない。
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