研究概要 |
人眼や動物眼において,眼内レンズ移植後,レンズ表面には多数の細胞が付着する。その主な細胞はマクロファ-ジと多核巨細胞である。今回はサル眼を用いて、これらの細胞がどのようにしてレンズ表面に付着するのかを電顕的に検討した。レンズ表面に付着したマクロファ-ジや巨細胞には多数のマイクロフィラメントがみられ、細胞のレンズ表面への付着に重要な役割を果たしていると考えられた(Ishibashi et al:Graefe's Arch Clin Exp Ophthalmol 228:356ー362,1990)。 またレンズ表面に付着した細胞とレンズ表面には電顕で観察すると、薄い膜様物がみられた。この膜様物を免疫組織化学的に検討すると,抗フィブロネクチン血清に陽性反応を示し、フィブロネクチンが含まれていることが確認された。またフィブロネチクン以外の血漿成分に対する抗血清にも陽性反応を示し、膜様物の構成成分はフィブロネクチンを含む血漿の混合物であることが示唆された(坂本他:日眼94:1074ー1078,1990)。 これらの細胞浸潤には血液房水柵の破綻が重要と考えられるが,その破綻の機序をhorseradish peroxidase(HRP)をトレ-サ-として用い,サルの虹彩血管において検討した。その結果,眼内レンズ移植後には虹彩血管からHRPが血管外に漏出し、虹彩血管は透過性の亢進を示していた。その機序は虹彩血管内皮細胞間にある細胞間接合部の離開および内皮細胞の小胞輸送によるものと考えられた。 後房レンズ移植後に発症した細菌性眼内炎を報告した。術後7カ月して炎症所見が出現し、炎症が消退しないため、術後約1年して後房レンズと後嚢を摘出した。後嚢周囲には肉芽組織が形成され,肉芽組織中のマクロファ-ジの胞体内に細菌が認められた(石橋他:眼科手術3:389ー392,1990)。
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