研究概要 |
眼内レンズ移植後、眼内レンズ表面には多数の細胞やフィブリンなどが付着する。その発生原因として、血液液房水柵の破綻が重要と考えられるが、その機序は不明であった。今回サル眼を用い、血液房水柵の構成成分のひとつである虹彩血管における柵破綻の機序をhorseradish peroxidase(HRP)をトレ-サ-として使用して検討した。その結果、眼内レンズ移植後には虹彩血管からHRPが血管外に漏出し、虹彩血管は透過性の亢進を示していた。その機序は虹彩血管内細胞間にある細胞間接合部の離開および内皮細胞の小胞輸送によるものと考えられていた(Ishibashi et al:Jpn J Ophthalmol 35:347ー353,1991)。 また眼内レンズ表面へのフィブリンの付着ならびに線溶過程に及ぼす水晶体上皮細胞の影響を検討するために、牛水晶体上皮細胞を培養し、培養液中に放出されたプラスミノ-ゲン・アクチベ-タ-(PA)とプラスミノ-ゲン・アクチベ-タ-・インヒビタ-(PAl)に関する検索を行った。培養牛水晶体上皮細胞はフィブリン溶解系の主要酵素である組織型PA(tーPA)とそのインヒビタ-である1型PAlを産生放出していた。培養溶中に放出されたtーPAによるPA活性は1型PAlにより抑制され、培養液全体としての線溶活性は認められなかった。水晶体上皮細胞ではフィリブリン溶解を促進する活性よりもむしろ抑制する活性が優位であると考えられた(福嶋他:日眼95:543ー547,1991)。 眼内レンズ移植後にみられる後発白内障は、視力低下や眼内レンズの偏位などを生じ、臨床的に問題となる。サル眼に計画的嚢外摘出術および後房レンズ移植術を行い、後発白内障の形態を現在検討中である。
|