研究概要 |
眼内レンズ(IOL)移植後にみられる後発白内障は、視力低下やIOLの偏位などを生じ、臨床的に問題となる。後発白内障のひとつに、切開した前嚢縁に生じる輪状の白色の混濁がある。この混濁は術後早期に生じ、前嚢がIOLに接している部に強くみられる。その原因として、水晶体上皮細胞の線維性化生が考えられているが、まだ不明の点が多い。今回、サル眼にIOLを挿入し、前嚢切開縁にみられる輪状の混濁を病理組織学的に検討した。混濁部を透過型電子顕微鏡で観察すると、細胞成分と細胞外成分の増生が前嚢とIOL光学部の間にみられた。細胞は紡錘形を呈していたが、デスモゾームや基底板を有し、水晶体上皮細胞と考えられ、線維芽細胞への化生はみられなかった。また変性、壊死をきたした水晶体上皮細胞もみられた。細胞外成分として、膠原線維、細線維、基底板様物質などが認められた(日本眼科学会雑誌に投稿中)。 また人眼より摘出した5つのIOLの表面を透過型電子顕微鏡を用いて検討した。摘出理由はIOLの偏位である。IOLの表面は平滑で、膜様物がみられた。2つのIOLの表面には細胞がみられ、マクロファージと巨細胞であった。しかし、異物肉芽腫は全例にみられなかった(Cells and Materials 1:301-306,1991)。
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