研究概要 |
1)眼内レンズ(IOL)移植後、レンズ表面には多数の細胞やフィブリンが付着する。人眼において、その細胞がマクロファージや多核巨細胞であることが確認された(Cells and Materials 1:301-306,1991)。それらの細胞のIOL表面への付着には、細胞質にあるマイクロフィラメントが重要であった(Graefe's Arch Clin Exp Ophthalmol 228:356-362,1990)。 2)IOLに付着した細胞とIOL表面には、薄い膜様物がみられた。その構成成分はフィブロネクチンを含んだ血漿蛋白であった(日眼94:1074-1078,1990)。 3)細胞浸潤やフィブリン形成には血液房水柵の破綻が重要であると考えられていたが、その機序は不明であった。血液房水柵の構成成分のひとつである虹彩血管における柵破綻の機序を実験的に検討した。その機序は虹彩血管内皮細胞間にある細胞間接合部の離開および内皮細胞の小胞輸送にとるものと考えられた(Jpn J Ophthalmol35:347-353,1991)。 4)フィブリン形成ならびに線溶過程に及ぼす水晶体上皮細胞の影響を、牛水晶体上皮細胞を使って検討した。牛水晶体上皮細胞はフィブリン溶解系の主要酵素である組織型PAとそのインヒビターである1型PAIを産生放出していた。この両者を比較すると、フィブリン溶解を促進する活性よりも、むしろ抑制する活性が優位であると思われた(日眼95:543-547,1991)。 5)後発白内障のひとつである前嚢混濁を病理組織学的に検討した。混濁部は、増殖した水晶体上皮細胞と膠原線維などを含む細胞外成分がみられた。時間の経過とともに細胞外成分が多くなった(日眼投稿中)。
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