1.〔目的〕硝子体手術眼に術後白内障が発現することはよく経験するが、これの発現頻度、発現様式、進展の経過などを明確したものはない。本研究はこの点を明らかにし、白内障の発現機構を解明することを目的に行われている。2.〔対象、および方法〕研究対象は硝子体手術が施行された人眼、猿眼である。手術内容は単純硝子体除去術に限定した。水晶体混濁の早期検出特殊手段として、(1)CCDカメラにより撮影された水晶体Scheimpflug画像からの散乱光強度計測、(2)Opacity Lensmeterによる測定、(3)レ-ザ-散乱分光測定、水晶体蛍光強度測定などを可能な限り行った。3.〔現在までの結果〕(1)すでに硝子体手術が施行された症例の検討より、術後に発現する白内障の病型は核混濁を主体とするものであることが明確になったため、確定診断法が確立してない本病型の客観的な診断法を開発した。Scheimpflug画像上でとらえられる前・後胎生核部の散乱光強度に出現する差を画像解析手段により検出し核混濁を定量的に評価しようとするものである(投稿中)。(2)人眼では術後かなり早期から水晶体所見に変化が出現している症例をみている。初期変化は皮質深部に始まるものと思われる。(3)猿眼では手術時に用いる灌流液量、温度条件を変えた群につき術後水晶体変化をみている。現時点までの観察では、大量の灌流がおこなわれた群、低温度の灌流液が用いられた群で早期の水晶体変化を検出している。4〔考察・結論〕予想通り、硝子体術後にはきわめて高率に白内障が出現した。肉眼による細隙灯顕微鏡検査のみでは検出が難しい初期変化は、核部にはなく皮質深部に出現する。核混濁の初期像もScheimpflug画像の解析から検出が可能となった。長期観察が行われる人眼・実験動物眼の解析数が次年度には増えるため、前記観察事項は更に明確にされると思われる。また、発現機構解明のための病理組織学的検索、生化学的検討が動物眼を用いて行われている。臨床所見とのつきあわせで当初の研究目的は達成できるものと考えている。
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