ブタ幼若エナメル質の深層にのみ含まれている分子量32kDaの非アメロゲニン蛋白のN端部合成ペプチドに対する抗体を作製し、免疫組織化学と免疫化学によってブタの殺若エナメル質を検索して、以下の結果を得た。 1.32kDa蛋白は、分子量140kDaまだは89kDaの高分子蛋白としてエナメル芽細胞より分泌される。これは速やかに分解されて分子量56kDaおよび45kDaの蛋白を経て深層の32kDa蛋白となる。 2.140kDaまたは89kDaの蛋白は、幼若エナメル質の表層のみに含まれていて、形成期ではエナメル芽細胞のト-ムス突起の形成面近くのエナメルに高濃度に局在するが、Stippled materialや小柱鞘にはほとんど含まれていない。また分化期における32kDa蛋白様免疫活性は、エナメル質の初期石灰化が起こっていると考えられる基質に一致して認められる。 3.アメロゲニンとの二重染色の結果、32kDa蛋白様免疫活性はエナメル質の石灰化が起こっていると考えられる部位に強いが、アメロゲニンの免疫活性は石灰化と関係するとは言えなかった。 4.形成期エナメル質の32kDa蛋白様免疫活性は、エナメル質表層から中層(深さ約100μm)ではエナメル小柱と小柱間エナメルに強く、小柱鞘の免疫活性は弱い。しかし、深層では免疫活性が弱くなると共に、ほぼ均一に分布する。またこの分布様式は、89kDaエナメリン様免疫活性の分布様式と似ていた。 5.移行期から成熟期初期にかけて、32kDa蛋白様免疫活性は急速に減弱し、成熟期ではほぼ消失する。以上の結果、32kDa蛋白のオリジナルな蛋白がエナメル質の石灰化と強く関係していると考えられた。
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