ブタのエナメル蛋白の合成ペプチドフラグメントと精製したエナメル蛋白に対する抗体を作製し、免疫組織化学によってブタ、ラットの幼若エナメル質におけるエナメル蛋白の局在を検索し、以下の点が明かとなった。 1.エナメル芽細胞より分泌された分子量25kDaのアメロゲニンは幼若エナメル質表層で速やかに分解され、エナメル質質深部に存在するアメロゲニンのほとんど分解産物である。 2.分解されたアメロゲニンのN末端のフラグメント(分子量6ー7kDa)はエナメル芽細胞内と幼若エナメル質表層にはほとんど存在せず、中層から深層に存在し、石灰化が進行すると小柱鞘に局在するようになる。 3.分子量89kDaのエナメリンは分泌直後にはエナメル小柱に局在するが、速やかに分解される。分解産物のうち、N末端の低分子フラグメントは、小柱鞘に局在する可能性がある。 4.小柱鞘はアメロジェニンやエナメリンとは異なる小柱鞘蛋白によってまず形成され、その後アメロジェニンやエナメリンの分解産物がこれに加わっていく。エナメル芽細胞から分泌された小柱鞘蛋白の分子量は、30ー40kDaで、分泌後アメロゲニンよりも速やかに分解されると考えられる。 5.小柱鞘はラットの切歯と臼歯には存在しない。ラットのエナメル質の形成様式は、ブタやヒトの異なると考えられる。 6.分子量32kDaの非アメロゲニン蛋白は分子量140kDaまたは89kDa蛋白の分解産物であり、これらの高分子蛋白はエナメル小柱に局在すると共に、エナメル質の石灰化と強く関係していると考えられる。これに対し、アメロゲニンはエナメル質の石灰化とは関係しないと考えられた。
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