研究概要 |
雄性家ウサギを用い、咽頭収縮筋を構成する上咽頭収縮筋、中咽頭収縮筋、あるいは下咽頭収縮筋である甲状咽頭筋や輪状咽頭筋にHorseradish peroxidase(HRP)またはNuclear yellow(NY)を注入して、これら各筋の運動神経細胞の疑核内局在を検討した。注入にはマイクロシリンジを用いた。注入後、24〜48時間動物を生存させて後、潅流固定を行い、ついでHRP注入例については、テトラメチルベンチジンを用いて運動神経細胞を標識せしめた。標識細胞の検索には光学顕微鏡を用いた。NY注入例については、螢光顕微鏡を用いて螢光標識細胞を観察した。ウサギ疑核は、吻側半の高さで細胞が密集するCompact cell group(CoG)、その内方および外方にそれぞれ散在するMedial and Lateral scattered cell group(SGmとSG1)、および尾側2/3の高さで細胞が散在するDiffuse cell group(DiG)の4細胞群よりなる。咽頭収縮筋運動神経細胞は同側性に存在し、ウサギ疑核の4亜核中のCoGに存在した。同筋運動神経細胞は、obexの吻側500ー2900μmにわたるCoGのほぼ全長で、CoGの背側よりにみとめられた。CoGの腹側部にはobexの吻側1200ー1900μmにかけて食道筋運動神経細胞が密集するが、咽頭収縮筋運動神経細胞はこれとは明瞭に分離し、細胞の密集度はこれより小さい。上咽頭収縮筋、中咽頭収縮筋、甲状咽頭筋、および輪状咽頭筋の各運動神経細胞は、それぞれobexの吻側1100ー2900,850ー2900,550ー2500,500ー2400μmに存在し、位置的に大きく重複するものの、この順に吻側から尾側に配列する傾向を示した。また、頭蓋腔内で迷走神経根を切断の後、全ての咽頭収縮筋にHRPを注入した例では、標識細胞は出現しなかった。すなわち、咽頭収縮筋運動神経細胞の軸索は迷走神経根を経由することが示唆された。
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