研究概要 |
1.雄性家ウサギを用い、5μ1のHorseradish peroxidase(HRP)生理食塩水溶液をマイクロシリンジを用いて経口的に軟口蓋に注入した。注入後24〜48時間動物を生存させた後、潅流固定を行い、テトラメチルベンジンを用いてHRP標識細胞を検出した。HRP標識細胞はobexとその吻側1.9mmの間の高さにみとめられ、尾形らの区分(歯基礎誌,29:652-663,1987)による疑核のCompact cell group(CoG)で、食道筋運動神経細胞の存在するventromedial subgrpup(北村ら,解剖誌,66,412,1991)とは明瞭な分離を示した。一方、咽頭収縮筋運動神経細胞の存在するdorsomedial subgroup(Anat.Rec.,229:399-406,1991)とは一部重複し、最吻側の高さでは同subgroupの腹内側部に出現するが、しだいにこのsubgroupを侵蝕し、やがてこれに置き換わるようになる。細胞数は157-196で、obexの吻側0.5-1.6mmで多い。 2.口蓋咽頭筋と口蓋帆挙筋の二筋に別個に1μ1のHRP溶液を注入した。口蓋咽頭筋注入例ではobexの吻側0.5〜1.9mmで、CoGの上記の軟口蓋支配域にHRP標識細胞が出現した。一方、口蓋帆挙筋注入例では、注入手技上の困難から末だはっきりした局在域が不明である。標識物質やapplicationの方法を更に改善し、今後この点を明確にしたいと考える。 3.神経あるいは神経枝へのHRP溶液の注入、あるいは当該神経のみを残した口蓋・咽頭筋、さらに迷走神経下神経筋へのHRP注入により、舌咽神経、迷走神経咽頭枝、上喉頭神経、頚下部迷走神経、反回神経、および副神経延髄根の各起始細胞の疑核内局在を検討した。その結果、疑核の口蓋筋支配域には迷走神経咽頭枝起始細胞のみが存在し、口蓋筋運動神経細胞の軸索が迷走神経咽頭枝を経由することが明らかになった。
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