研究概要 |
エナメル芽細胞の分化にともなう、Golgi装置の組織化学的性状の変化に関して、TPPase,NADPase,Acpaseの酵素活性は、内エナメル上皮細胞においてすでに存在し、細胞分化にともないよりGolgi装置の各compartmentに一致した分布を示した。一方、OsO_4 impregnationでは、通常cis側で認められるOsO_4陽性を示すcisternaが、内エナメル上皮細胞では認められなかった。このOsO_4陽性を示すcisternaが最初に出現するのは、Golgi装置が細胞の遠位部に移動してからであった。このことは、Golgi装置の各compartmentでcis側のcompartmentの確立が最もおくれて起こることを示していると考えられる。 分化期エナメル芽細胞(内エナメル上皮細胞を含めて)と分泌期のものとで、糖の付加活性をHRP標識lectin(Con A,GS I,SBA,UEA I,WGA,PNA)を用いて比較した。用いたlectinの内PNAを除いたものでは、細胞分化の全ての時期を通じて(内エナメル上皮細胞から分泌期エナメル芽細胞まで)、分布や強度的な変化を認めるものの、反応産物の沈着をGolgi装置のcisternae内で認めた。これらの反応は、UEA Iを除き、細胞分化が進み分泌活性の増加にともないより強くなっていた。PNAでは細胞が未分化な時期や分化期では、ほとんど反応産物は認められず、反応産物は、より分化の進んだ細胞で、細胞内の遠位部に移動したGolgi装置において初めて認められた。これらのことは、細胞が分化し分泌活性が高まるとともに、gal NAc,glcーβーgal NAcなどの糖鎖の付加活性が増加していることを示していると考えられる。一方、HRP標識lectinでは、エナメル質や分泌顆粒上での反応が不明瞭なので、より明瞭な結果を得るためにGold標識lectinを用いて実験を行ったが、市販の標識lectinでは良好な結果が得られず、自家製の標識lectinの作成や、間接法を用いての反応を試みている。
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