研究概要 |
エナメル芽細胞の細胞分化にともない、発達期にあるゴルジ装置がそれぞれの時期で、どのような糖付加活性を示すかを、6種類のHRP標識レクチン(Con A,GSーI,UEAーI,WGA,PNA)と6種類のGold標識レクチン(Con A,RCAーI,SBA,UEAーI,WGA,LFA)を用いて調べた。分泌期エナメル芽細胞のゴルジ装置では、用いた全てのHRP標識レクチンで明瞭な反応性が見られ、個々のレクチンによる反応産物はGolgi stack内での分布にそれぞれ限局性を示した。一方、分化期のエナメル芽細胞では、様々な大きさの発達期にあるGolgi stackが核の近位側や側方に位置して見られた。これらのGolgi stackは、それぞれのレクチンに対して多様な反応性を示した。中には、構成する全てのcisternaで、それぞれのレクチンに関して、反応産物の沈着を認めるものもあった。これらのことから、発達期にあるGolgi stackのcisterna内には、様々な糖付加酵素が共存している可能性を示し、分化期エナメル芽細胞のGolgi stackはまだ十分にはsubcompartmentの区分を確立していないものと考えられた。分泌期エナメル芽細胞のGolgi stackにおいてGa1NAcに特異性を示すSBAがcis側のcisternaで、Ga1ーβ(1ー3)ーGa1NAcに特異性を示すPNAがtrans側のcisternaで染色性をそれぞれに示していた。この事は、エナメル基質内の糖鎖にはNーlinkedだけでなくOーlinkedの糖鎖も含まれていることを示唆するものであった。αーGalに特異性を示すGSーIがcis側のcisternaに対して染色性を示したが、この分布は免疫組織化学的に示されたGalの付加酵素の分布と異なることから、分泌期エナメル芽細胞のゴルジ装置内には2つの異なるGal付加酵素が存在している可能性が考えられた。 一方、エナメル基質および分泌顆粒上での糖鎖の分布はHRP標識レクチンでは明瞭には判別できず、Gold標識レクチンの使用を必要とした。市販のものを用いて実験を試みたが、反応性が乏しく不十分なものであった。現在、自家製のGold標識物の作成を試み、直接法および間接法を用いてエナメル基質および分泌顆粒内での糖組成の検索を、消化法を併用しつつ試みようとしている。
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