研究概要 |
頭部神経堤細胞の器官原器の誘導能は主に鳥類を中心に多く報告されてきた。ところが、鳥類には歯が無く、歯胚誘導の研究を行なうためには哺乳類胚を用いた研究が必須のものとなった。しかし、哺乳類の場合鳥類とは異なり移植実験が困難であることから、抗体による細胞識別実験を中心に考えることが最良と思われた。 当年度では、前年度の実験条件の設定にもとづき、得られた抗体を用いて、頭部神経堤細胞が頭部から歯胚へ至る道程を追及した。動態追跡にはC57B1/6系マウス13日胚を用いた。13日胚頭部標本は(1)動態追跡、(2)抗体スクリ-ニング,(3)抗原として用いた。(1)と(2)に関しては、当該研究により開純した新AMex法を用い、50%アセトン、0.1MPBS中で37℃、360W出力のマイクロウエ-ブ(バイオラド社、H2500)で固定した。(3)に関しては、固定、無固定とも得られた単クロ-ン抗体は同一であった。単クロ-ン抗体の作製は前年度から更に改良を加え、2段階感作のin vitro immunization法を用い、(2)を抗原としてBalb/c系マウスヒ細胞、PAIミエロ-マによるハイブリド-マに産生させた。培養上清中の単クロ-ン抗体はWestern Blotting法、Subclass決定のためのOuchterlony法等で確認した。動態追跡用の頭部標本は、終脳、眼球、上顎臼歯歯胚を通る面で切片を作った。 切片は抗体を含む培養上清で反応させた後、ヤギ抗マウスIgG Gold Conjugate(BioCell Research 社)で反応させ金コロイドのシグナルを光顕で検定した。その結果、シグナルは、頭部皮下、眼球周囲、上・下顎突起、歯胚周囲の間葉細胞、三叉神経節に検出された。また眼球間で二又に分かれるように見え、歯胚周囲では近心側により強く検出された。このことから、頭部神経堤細胞は頭頂部から終脳外表に沿って下降し、眼球の内下方で二分し、内側の方は上顎歯胚へ達することが推測された。
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