研究概要 |
平成2年度において,高橋らの研究組織は長崎大学歯学部附属病院第2保存科を受診したadult periodontitis14例,rapidly progrssive periodontitis6例の歯周疾患患者の歯肉組織を採取し,歯肉内の出現細胞について各種モノクロ-ナル抗体による免疫組織化学的検討を行った。まず,厚さ4μmの凍結切片を作成し,ABC法により抗Tリンパ球抗体(Leu2a,Leu3a+3b,Leu4+5b,Leu7),抗Bリンパ球抗体(KiB3,Leu14),抗単球・マクロファ-ジ抗体(KiM1,KiM2,KiM4,KiM6,KiM8,Leu M5),抗ランゲルハンス細胞抗体(HLAーDR,OKT6),抗NK細胞抗体(Leu7,Leu11b)の染色を施した。それぞれの染色標本から陽性細胞についての分布や比率を求め,臨床所見とくに歯周ポケットの深さと対比させ検討した。その結果,歯周ポケットの浅い症例(6mm未満)ではT細胞がB細胞より優位を占めており,T細胞は上皮直下に散在性に認められた。一方,歯周ポケットの深化(6mm以上)と共にT細胞は減少するのに対して,B細胞が著増し,B細胞は浸潤細胞の集簇巣の多くを占めるようになる。T細胞のsubpopulationでは歯周ポケットの深さと関係なく,ヘルパ-/インデュ-サ-T細胞が細胞障害性/サプレッサ-T細胞より優位であった。NK細胞については,歯周ポケットの浅い症例ではLeu7陽性・Leu11b陰性の不活性型NK細胞とLeu7陰性・Leu11b陽性の活性型NK細胞の比はほぼ1:1であるが,歯周ポケットの深化と共に活性型NK細胞が増加する傾向を示した。このことから,NK細胞が歯周ポケットの深化,歯周組織の破壊と関連性のあることが示唆された。現在収集した20例では単球・マクロファ-ジの出現頻度は比較的少なかった。従って,辺縁性歯周炎の発症機序における単球・マクロファ-ジの役割を明確にするには,歯周ポケットの深さが4mm前後の比較的初期の歯周炎患者の歯肉組織の蓄積が必要と思われ,この点を今後の検討課題と考えている。
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