研究概要 |
高橋らの研究組織はヒト歯周疾患の歯肉における浸潤細胞の免疫組織化学的検討を行い,次の2点について検索した。第1点は病変部におけるT細胞・B細胞・T細胞のサブセット・ナチュラルキラ-(NK)細胞・単球・好中球の出現率と臨床病態との関連についてであり,第2点は炎症巣に出現する各種細胞におけるインタ-ロイキンの発現の意義についてである。対象は長崎大学歯学部附属病院第2保存科を受診したadult periodontitis(AP)31例とrapidly progressive periodontitis(RP)4例の歯肉である。切除歯肉は直ちに液体窒素で凍結され,厚さ4.5μmの凍結切片として作成された。4℃アセトンで10分間固定後,H・E染色とABC法による免疫染色を施した。使用した一次抗体はpan T細胞・pan B細胞・ヘルパ-T細胞・サプレッサ-T細胞・NK細胞・単球・大食細胞・好中球を同定するモノクロ-ナル抗体であり,さらにサイトカインであるインタ-ロイキン(IL)1α・1β・2・3・4・6の抗血清を用いた。切除歯肉0.04mm^2における各種抗体での陽性細胞を算定し,その比率を求め,臨床像と対比した。尚,臨床的にはポケットの深さ6mm以上を重症例,6mm未満を軽症例とした。その結果,重症APやRPではβ細胞サプレッサ-T細胞ーNK細胞の著しい増加がみられたが,軽症APではヘルパ-T細胞の微増がみられたにすぎない。単球・大食細胞に関しては,いずれの病態群においても出現頻度は低く,カつ臨床病態との相関性は認められなかった。ILについては,1α・1β陽性細胞ともに重症APやRPで出現率が増加していた。一方,IL4・6陽性細胞は重症APでは増加傾向を認めたが,軽症APやRPでは著変を示さなかった。今後,ヒト辺縁性歯周炎の歯肉でのILの出現率の詳細な検討を行うことによって本疾患の病因の解明が期待される。
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