正常歯胚ならびに歯原性腫瘍の発生における上皮内細胞の動態に関する病理学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670811
• 研究機関: 岩手医科大学
• 研究代表者: 武田 泰典 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (60137536)
• キーワード: 歯胚 / 歯原性腫瘍 / 上皮内細胞 / 組織発生 / エナメル器 / 間葉組織 / エナメル上皮腫 / 硬組織形成

研究概要

1.歯胚の形成過程における上皮内細胞の動態に関する組織学的検討:イヌ胎児の歯胚を用いて、エナメル器の形成期と成熟期における上皮内細胞の関与の有無を検討中である。その結果、エナメル器の形成期に、上皮内細胞の一部が粘膜上皮側から形成途上のエナメル器側へ移動してくることを示唆する所見を観察しており、なお、その詳細を検討している。
2.エナメル上皮腫と骨組織との関連:歯原性上皮性腫瘍であるエナメル上皮腫の多数例について、間葉成分の動態を中心に検討を加えた結果、一例に間質反応としての高度の骨形成が認められた。この骨形成と腫瘍上皮細胞との直接的な関連はみい出せなかったが、臨床的には顎骨に生ずる線維骨性病変との鑑別が問題となる例であり、英文誌に発表した。
3.歯原性混合腫瘍における歯牙硬組織成分の形成:歯原性混合腫瘍のなかで、エナメル上皮線維象牙質腫あるいはエナメル上皮線維象牙質肉腫については、その存在が疑問であった。そこで、硬組織形成性の悪性歯原性混合腫瘍を用いて、連続切片を作製して検討を加えた。その結果、広範囲に象牙質が形成されている症例では、詳細な観察によって同時に多少ともエナメル質が形成されていることを証明した。したがって、エナメル上皮線維象牙質腫(あるいは肉腫)は、エナメル上皮線維歯牙腫(あるいは肉腫)とすべきであることを英文誌に発表した。
4.エナメル器に出現する腺管状構造:歯牙腫を用いてその実態を明らかにした(英文誌で印刷中)。
5.その他の歯原性病変に関する英文論文2編。

研究成果

• [文献書誌] TAKEDA,Yasunori;SUZUKI,Atsumi;KURODA,Masafumi: "Ameloblastoma with prominent stromal ossification." Acta Pathologica Japonica. 40. 780-784 (1990)
• [文献書誌] TAKEDA,Yasunori;KURODA,Masafumi;SUZUKI,Atsumi: "Ameloblastic odontosarcoma (Ameloblastic fibroーodontosarcoma)in the mandible." Acta Pathologica Japonica. 40. 832-837 (1990)
• [文献書誌] TAKEDA,Yasunori;YAMAMOTO,Hirotsugu: "Ameloblastoma located in the alveolar bone;a case report." Journal of Nihon University School of Dentistry. 32. 270-274 (1990)
• [文献書誌] TAKEDA,Yasunori: "Ductーlike structures in odontogenic epithelium of compound odontoma." Journal of Oral Pathology and Oral Medicine.
• [文献書誌] TAKEDA,Yasunori;KURODA,Masafumi;AMARI,Eiichi: "Ameloblastoma in Japanese children." International Journal of Pediatric Dentistry.