1.歯胚の形成過程におけるメラノサイトの存在と分布に関する病理組織学的検討:イヌ胎児を用いて歯胚の形成過程におけるメラノサイトの存在と分布を病理組織学的に検討した。その結果、歯胚の石灰化開始以前に骨内を中枢側からmigrationしてきたメラノサイトは歯胚周囲結合組織に達していた。歯胚の石灰化開始以降の周囲結合組織内のメラノサイトはエナメル器あるいは歯乳頭に接近して移動してくる所見は認められなかった。したがって、正常な状態で歯胚とメラノサイトとの間に何らかの関連があるとすれば、それはサイトカインの様なものを介する間接的なもと推測した。なお、歯胚形成期における周囲メラノサイトの出現状況は上下顎で著しい差は認められなかった。本検討結果は現在論文としてまとめている。 2.歯の萌出後の顎骨内メラノサイトの出現状況と分布に関する病理組織学的検討:歯胚形成期に顎骨内に出現したメラノサイトのその後の消長や分布状況を成犬を用いて病理組織学的に検討した。その結果、メラノサイトは歯根膜内に種々の程度に認められ、とくに歯根側1/2〜根尖部の範囲にわたって多くみられる傾向にあった。また、メラノサイトは歯根膜線維の走行と直交するように細胞質突起を伸長させていた。目下のところ歯根膜内に出現したメラノサイトの生物学的意義にまでは言及できるデータを得てはいないが、これまで内外の文献に記載のない画期的な発見であり、本年4月の日本病理学会総会において発表する予定である。 3.顎骨内の歯原上皮遺残と神経線維束との関連に関する病理組織学的検討:ヒトの顎骨を用いて検索中であるが、歯根膜内に残存した歯原上皮遺残は神経線維束を伝わって骨体部のかなり深部にまでmigrationしていくことをみい出し、さらに詳細を検索中である。
|