研究概要 |
私共は本年度において歯肉線維芽細胞と歯根膜線維芽細胞という二つの歯周組織細胞を用い炎症性サイトカインのそのDNA合成ならびに遺伝子発現及ぼす作用について検討した。 インタ-ロイキンー1の両細胞のDNA合成に及ぼす作用を調べたところ明らかにその合成能に対し促進的に作用した。この促進作用は濃度また培養時間依存的であった。最近,細胞分裂,分化に関わる遺伝子としてcーMyc,cーfosという癌遺伝子が注目されている。ゆえに,このインタ-ロイキンー1のこの促進作用を遺伝子発現の立場から解析するため,これら両癌遺伝子の発現に及ぼす作用について調べた。その結果,インタ-ロイキンー1は両細胞のcーMyc遺伝子の発現を処理後90分で著明に上昇させた。一方同様の検討を,TGFーβについても調べたところ,インタ-ロイキンー1と同じように,そのDNA合成とcーMyc遺伝子の発現を著明に促進した。また興味あることに,歯肉線維芽細胞と歯根膜線維芽細胞のアルカリホスファタ-ゼ活性は明らかに異なることが示された。この酵素活性に及ぼすサイトカインの作用について調べたところ,歯根膜線維芽細胞においてインタ-ロイキンー1は抑制的に作用するのに対し,TGFーβは促進的に作用することがわかった。また,最近,新たな炎症性サイトカインとして注目されているインタ-ロイキンー6の産生と遺伝子発現に及ぼす作用について調べた。その結果,インタ-ロイキンー1はインタ-ロイキンー6の産生を著明に誘導し,処理後3時間目に有意の誘導効果が検知できた。この産出の動態について調べたところ,24時間目が最も高い誘導効果を示した。さらにこの作用を遺伝子発現の立場から調べたところ,その遺伝子の発現はその産生と同様著明な発現を認めることができた。
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