研究概要 |
歯肉線維芽細胞の機能と遺伝子発現に関するサイトカインの調節作用]は、成人性歯周疾患で認められる歯肉の炎症と歯槽骨の吸収の機構の一端を明らかにするため本疾患の病原性細菌であるBacteroides gingivalisの歯周組織の付着に関与する線毛による歯周組織細胞のサイトカイン遺伝子の発現とその産生について検討し、それらサイトカインがさらにautocrineまたはparacrine経路を介してその線維芽細胞の遺伝子発現にどのように作用するかについて調べた。 精製線毛を調製し、マウスマクロファ-ジに作用させある一定時間培養後そのtotal RNAを調製し、Northern blot assayにより各炎症性サントカインの遺伝子発現とその発現機構について検討した。その結果、本線毛はILー1α ILーβ,TNFーαの遺伝子発現を誘導し、その効果はその濃度また作用時間依存的であった。さらにこの誘導効果が各遺伝子の転写レベルで認められた。また、これら遺伝子産物がその上清に検知された。一方、好中球走化性因子であるKCの遺伝子発現についても検討したところ、本線毛はこの遺伝子の発現をprotein kinase Cの情報伝達系を介して誘導することを明らかにし、そのmRNAレベルがposttransriptionalにより調節されていることを明らかにした。 さらに、これら炎症性サイトカインの歯肉線維芽細胞の炎症性サイトカインの発現に関する作用について検討した。その結果、ILー1β TNFーαは本細胞のILー6,単球走化性因子JE、さらにILー1αの発現を転写レベルで促進させ、その発現を上昇させた。 これらの知見より歯周疾患で認められる歯肉の炎症と歯槽骨の吸収という二つの病態は極めて複雑かつ精緻で秩序だったサイトカインネットワ-ク機構が歯周疾患病原性細菌などの感染により乱れ発症ならびに進展することの可能性が示唆された。以上の可能性から推察し成人性歯周疾患の一病原性細菌であるBacteroides gingivalisの線毛はその組織への付着性から考え、一連の歯周組織で認められるサイトカインネットワ-クのtriggerとして機能し、その過剰な刺激がその制御されたそのサイトカインネットワ-クの乱れを誘導するものと思われる。今後、この点についてさらに究明することが重要のように思われる。
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