本研究は、ビデオあるいはレーザー顕微鏡で開口分泌時の細胞動態(分泌顆粒の動き、膜融合の過程、膜融合後の余剰膜の処理など)を直視して、唾液分泌の調節機構を解析しようというものである。 平成2年度では、これまで開口分泌の詳細がよく研究されている耳下腺と顎下腺を材料に、β刺激薬であるイソプロテレノールによる分泌刺激を行ない、観察を行なった。その結果ビデオ顕微鏡観察では、1)開口分泌にともなう分泌顆粒の動きはほとんど認められない、2)膜融合の瞬間に分泌顆粒のlight intensityが急激に変化することの二点が明らかとなった。一方、レーザー顕微鏡観察からは、1)膜融合した分泌顆粒は、その丸い形をしばらくの間保持しており、その間に内容物は拡散により細胞外に放出する、2)融合した分泌顆粒膜は大きく拡大せず、その消失過程においてもエンドサイトーシスはほとんど検知しえないこと、などが示された。 平成3年度には、開口分泌の調節因子として重要な細胞骨格系に焦点をしぼり、共焦点レーザー顕微鏡とコンピュタグラフィックスを用いた観察を中心に解析を進めた。その結果、1)開口分泌後の分泌顆粒膜がアクチン線維に包まれること、2)サイトカラシンでアクチンを破壊すると融合膜が拡大すること、3)サイトカラシンを除去するとエンドサイトーシスが生じて、融合膜が処理されることなどが明らかになった。 平成4年度はこれまで電顕的・生理学的に全く異なるとされているβ刺激とムスカリン刺激による分泌機構の差に注目し、これらがカルシウムやリン酸化など細胞内情報伝達系によってどのように調節されるかを解析した。その結果、1)β刺激とムスカリン刺激ではexocytosis-endocytosis coupling機構が異なること、2)少なくともカルシウムとアクチンの相互作用によってβ刺激とムスカリン刺激時の開口分泌の膜動態が調節されていること、などが示された。 以上の研究にあたり、申請したビデオ機器、消耗品関係の購入を予定どおり行なった。
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