研究概要 |
Porphyromonas gingivalisは最も有力な成人性歯周病原細菌である。本研究はP.gingivalisが病原性を発揮するための第一歩である歯根膜等への付着機序の解明を検討する事によって、実際subgingivalls siteでどのように歯周炎が進行しているのかそのメカニズムをかいめいするとともに、本菌の定着阻害についての検討を加えてみた。 国内外からP.gingivalisの菌株を集めhydroxyapatite beadsを用いて結合組織構成成分(collagen,fidronectin,laminin)との付着性について検討した結果、付着能が菌株によって異なる事を確認した。その付着能は菌株保有の表層物質と関連があるかどうかをまず形態的にとらえて検討してみた。電顕観察によると、まったく付着性を示さなかった菌株には線毛構造がほとんど見られず付着に線毛が関与している事が示唆された。酸性多糖構造物についてはその厚さにはほとんど差は認られなかった。また、菌株固有の疎水性と付着性との間に相関性が認められた。さらに、この菌株表層の疎水性は病原性の強さにも関連するものと思われる。さらに,付着能は先天的なものでin vitroで長い間継代を燥返しても菌株固有の付着能や疎水性に変化は認められなかった。この付着能は表層物質であるvesicleやfimbriaeによって阻害された。特にwhole cellでは付着能が認められなかった菌株由来のvesicleでもcollagenへの付着は50%近くも阻害された。この付着能はtrypsinやproteneise処理によっても抑制されなかった。非病原性株で付着能の高い株では加熱によって付着性が減少したが、病原性株では一向に付着能が減少しなかった。このことから本菌の結合組織への付着にはfimbriaeの関与ばかりでなくvesicle表層にも存在するタンパク以外の物質の強い関与が推定される。
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