本実験では、加熱食品中に含まれている変異原物質のヘテロサイクリックアミンのTrpーPー2およびMeIQを動物の舌の創傷部(2m舌尖切除)に4週間塗布した後、舌に再度創傷を形成し、その舌の創傷治癒過程における上皮の変化を病理組織学的に検索した。 実験動物にはハムスタ-を用い、それらを処置の違いによって次のような各群に分けた。なお、塗布溶液には蒸留水(D)、1%TrpーPー2(T)・D、1%MeIQ(M)・Dの3種類を用いた。 第1群:切除ーDー切除ーD、第2群:切除ーTー切除ーT、第3群:切除ーTー切除ー無塗布、第4群:切除ーMー切除ーM、第5群:切除ーMー切除ー無塗布、第6群:切除ーDー無切除ーD、第7群:切除ーTー無切除ーT、第8群:切除ーTー無切除ー無塗布、第9群:切除ーMー無切除ーM、第10群:切除ーMー無切除ー無塗布。 各群の動物は2度目の創傷後(あるいは無創傷)後、15日目に屠殺して、舌組織を光顕的に観察した。 本実験の結果、第2、3、4、5群では、それぞれ5、4、5、4匹の動物の舌に軽度から中等度の上皮性異形成が認められた。 本実験の結果から、動物の口腔粘膜において複数の創傷の形成と少量のヘテロサイクリックアミンのTrpーPーPおよびMeIQの塗布を行うと、その口腔粘膜には上皮性異形成の生じることが判明した。したがって、これらのことから、創傷が生じやすく、また、加熱食品中のヘテロサイクリックアミンに常にさらされているヒトの口腔粘膜でも、同様な機序で、前癌病変である上皮性異形成のできる可能性のあることが示唆された。
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