研究概要 |
本研究は、Staphylococcus epidermidisより分離した細胞壁ペプチドグリカン水溶性画分(SEPS)によるin vitroでのマウス脾細胞の刺激にもとずくサイトカインの産生とin vivoでのSEPSによる炎症性関節炎の誘発との間の相関を検討し、以下の結果が得られた。 1.C3H/HeN マウス脾細胞はSEPSに反応して、マクロファ-ジ、顆粒球系統の増殖因子であるCSF(GMーCSF,ILー3)あるいはマクロファ-ジのサイトカインであるILー1,TNF,IFNを産生する。2.C3H/HeNマウスの脾細胞をin vitroでSEPS刺激を行うと、3日目をピ-クとするDNA合成が観察される。この増殖はILー2の産生によるTリンパ球の依存性増殖反応ではなく、骨髄系細胞の増殖因子(GMーCSF)による応答反応である。3.DDY,DBA/2,AKR,C5 7BL/6,C3H/HeNなどのマウスの脾細胞はSEPSによく反応してCSFを産生し、DNA合成を起こす。一方、Balb/c,C3H/HeJ,MRL/1prのマウスはこの反応性が悪い。4.Balb/cマウスはSEPS刺激によりPGE_2,TGFーβの産生が観察される。5.SEPS刺激脾細胞の各種サイトカインに対する反応性では、C3H/HeNマウスではILー2やGMーCSFによく反応し、Balb/cマウスではこれらのサイトカインに対する反応性は悪いが、ILー3,ILー4にはよく反応する。6.Balb/cマウスにSEPSを静注すると関節炎症が起こる。この反応は、急性の炎症で、白血球の浸潤が主体で一過性である。一方、C3H/HeN,C57BL/6マウスでは全く炎症が観察されない。 以上により、SEPS投与による急性炎症の発症には、少なくともSEPS刺激によるCSFの誘導反応性が関与している。すなわち、SEPS低反応性マウスでは容易に炎症が起こり、高反応性マウスでは炎症が誘発されにくいということが明確となった。
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