研究概要 |
中脳水道周囲灰白質(PAG)は,中脳正中部の吻尾側方向の広い範囲をしめ,その入出力関係はきわめて複雑であることが解剖学的研究から明らかにされている.本年度はとくに,非侵害および侵害刺激に対するPAGニュ-ロン応答の定量的解析を行った。その結果以下の諸点が明らかになった. 1)大縫線核への投射する下行性のPAGニュ-ロンはすべて非侵害刺激・侵害刺激双方に応答する 2)下行性のPAGニュ-ロンには受容野の広い(PAGーL)タイプと狭い(PAGーS)タイプがある。 3)PAGーLタイプでは,侵害刺激のくり返しによって応答が増強するワインドアップ現象が見られる.すなわち,侵害刺激に対する閾値の低下,および受容野の拡大が生じる。PAG'ーSタイプではこの様子現象は生じない. 4)PAGーLタイプのニュ-ロンでは,機械的侵害刺激に加えて,45℃以上の熱侵害刺激,およびブラジキニンによる化学的侵害刺激にも応答するニュ-ロンが多く見られる。 以上により,広い受容野をもつ下行性PAGニュ-ロンは,末梢からの侵害性入力あるいは触入力によってPAGー大縫線核系を介するフィ-ドバック回路により痛覚伝達を変調する機能を有することが示唆され,他方,PAGーSタイプのニュ-ロンではこの機能がないものと考えられる。
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