夜間、ウサギの下顎運動・咀嚼筋活動・脳波を連続して5時間記録した。実験に先立ち、動物は12時間照明、12時間消灯する生活に慣れさせておいた。5時間の記録中、睡眠・摂食・飲水・グル-ミングなどの下顎行動が確認できた。睡眠は小刻みであり、覚醒後いくらかの安静期間の後に摂食や飲水行動に移行することが予想されたが、予想に反して速やかに移行していた。これは、ウサギの生態に由来する行動の特殊性と考えられる。無麻酔・無拘束のウサギの摂食行動の記録は、これまでに報告はない。頭部を固定したウサギで観察され報告されている、餌の入った皿から飼料を摂取後、咀嚼・粉砕期を経て嚥下までの、いわゆる一連の咀嚼連鎖が確認された。しかし、自由運動時の摂食行動はこの咀嚼連鎖が独立して行なわれのではなく、この咀嚼連鎖の繰り返しで構成されていた。しかも、全体の持続時間はどのウサギでも約4分であった。また、摂食行動はその前後に睡眠や飲水等、まったく異なる下顎行動で区切られていた。咀嚼運動パタンは、頭部を固定して行われた研究とほぼ同様の結果が観察された。すなわち、一回の咀嚼行動は、2つの閉口相と1〜3の開口相で構成されていた。閉口相では速度の速いFC相、そして速度の遅いSC相が明確に識別できた。しかし、開口相では時にはそれぞれの相が明確に識別できたものの、通常ははっきりしなかった。食品の硬さと咀嚼パタンの違いを観察する為、市販の固形飼料、生米、食パンを与えて記録した。その結果、咀嚼周期・咀嚼パタン・咀嚼筋活動にこれまでの報告とは異なる結果が観察された。この点に関しては、今後さらに研究を進める予定である。
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