T.denticolaは菌周病の重要な原因菌であるが高度の偏性気性嫌菌であり、通常の培養法により細菌叢の動態を検査することは因難である。 T.denticola遺伝子バンクから、60kdal抗原タンパク質遺伝子のクロ-ニングを行い、さらにrunaway replicationプラスミドをベクタ-とした安定クロ-ンpMD303を得た。抗原タンパク質遺伝子の塩基配列解読のためにpMD303、2.9kbDNAの遺伝子地図を明らかにした。Kpnlーclal 1.75kbについてはpUC系deletion mutantサブクロ-ンDNAを作製しユニバ-サルprimerを、またClalーKpnI1.15kbDNAは伸展合成primerを用いて、dideoxy法により塩基配列の解読を行った。 一方リコンビナント60kdal抗原タンパク質を精製し、エドマン分解法によりN末端およびC末端のアミノ酸配列を分析した。そして、その結果と解読済みのDNA塩基配列情報片ら推定されるアミノ酸配列とを比較検討した。その結果、N末端およびC末端のアミノ酸配列分析結果と一致する領域を特定することに成功した。そして60並kdal抗原タンパク質のcoding領域はClaIーKpnI1.15kbの上流からKpnIーClal1.75kbに向って存在することが判明した。そこで、特定した構造遺伝子中の塩基配列情報から上流および下流部分のoliganucleotide断片をPCR法用のDNA primerとしてDNA合成機により合成した。つぎに歯肉縁下プラ-クからDNAを抽用し、TaqIポリメラ-ゼを用いてPCR法により遺伝子増幅を行い、DNAハイブリダイゼ-ションにより検出を試みた。その結果、直接的には検出不能であった歯肉縁下プラ-クから採取した微量試料でもT.denticolaの検索が可能であった。 以上の結果から、60kdal抗原タンパク質遺伝子を用いた、PCR法利用によるとDNA診断は歯肉縁下プラ-ク中の微量 T.denticolaを検出し本菌の初期感染を診断できることが示唆された。
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