研究概要 |
A)ヒト遺伝子ライブラリ-からシスタチン遺伝子ファミリ-の新メンバ-(3種)をクロ-ニングし、それぞれCST2B,CST4,CST5と命名した。塩基配列の解析は以下の知見を与えた。(1)CST2BはシスタチンSAをコ-ドし、CST2座位のSacI/RFLPである。(2)CST4はシスタチンSの前駆体(141残基)をコ-ドする。(3)CST5の遺伝子内に「フレ-ムシフト欠失」,「末成熟停止コドン」,「スプライシングサイトにおける変異」が存在するため、この遺伝子はシスタチン偽遺伝子であると思われる。 B)DNA配列の統計的ホモロジ-解析の結果、次の様な知見が導入された。(1)シスタチン遺伝子群は、遺伝子の重複や変換をくり返し、いわゆる「協調進化」によって生じた。(2)ファミリ-IIシスタチン遺伝子,ファミリ-IIIシスタチン遺伝子、BowmanーBirk型セリナプロテア-ゼインヒビタ-遺伝子は「共通の先祖配列を基的単位とする重複」によって発生したと考えられる。(3)ファミリ-IIシスタチンは分子内にBowmanーBirk型セリンプロテア-ゼインヒビタ-の阻害活性部位と相同なドメインを2つ含有する。これらのドメインはそれぞれシスタチン遺伝子の第2エクソンならびに第3エクソンに対応する。 C)これらのドメインに対応する合成ペプチドを調製し、プロテア-ゼに対する阻害効果を調べたところ,第2エクソンによってつくられるドメインはトリプシンを阻害し、第3エクソンに対応するドメインはキモトリプシンならびにシステインプロテア-ゼ(パパイン,フィシン)を阻害することがわかった。以上の解析デ-タは「1つのエクソンが1つの機能ドメインに対応する」ことを示唆する。第3エクソンに対応するタンパクドメイン内にはパパインと結合するといわれる「PW」配列が存在し、このアミノ酸配列が「システインプロテア-ゼ阻害の機構に関与する可能性も考えられる。
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