研究概要 |
ヒト菌肉線維芽細胞(Ginー1細胞)の無血清培養液を濃縮後、直接コラゲナ-ゼ活性を測定した場合、4ーアミノフェニル酢酸水銀(APMA)による活性化処理を行っても、活性は検出されなかった。しかし、抗TIMPモノクロナル抗体アフィニティ-カラムを通してTIMPをあらかじめ除去すると、そのままで活性が検出され(活性型コラゲナ-ゼが存在)、さらにAPMA処理によって4倍以上にも活性が上昇する(潜在型コラゲナ-ゼ活性が存在)ことが分かった。 ついで、Ginー1細胞によるコラゲナ-ゼとTIMP産生に対する炎症性サイトカイン(ILー1αとβ,TNFーα)の影響を調べたところ、ILー1αとβは、5ー500pg/mlで、ともにコラゲナ-ゼ(総コラゲナ-ゼ活性)の産生を有意に促進したが、低濃度(5ー10pg/ml)では明らかに異なった効果を示した。すなわち、活性型コラゲナ-ゼ産生において、αは促進的に、しかし、βは抑制的に作用した。これに対し、TIMP産生においては、逆に、αは抑制的に、βは促進的に作用した。しかし、30ー500pg/mlでは、α、β共にTIMP産生を抑制した。TNFーαは、1ー100ng/mlで、コラゲナ-ゼ産生に対して促進的な作用を示したのに対し、TIMP産生には抑制的な作用を示した。ILー1、TNFーαいずれのサイトカインについても、これらがGinー1細胞に作用し、コラゲナ-ゼとTIMPのバランスをコラ-ゲン分解系へと傾斜させることが明らかになった。これらin vitroでの結果は、歯肉炎や歯周疾患にみられるin vivoでの結合組織破壊の病態を考える上で重要な示唆を与える知見と考えられる。さらに、最近、特に注目されているサイトカイン、トランスホ-ミング成長因子βやインタ-ロイキン6についても検索中である。
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