研究概要 |
本研究課題は、我々がここ数年来行ってきた庶糖との混合使用可能な新しいタイプの抗う蝕原性代用甘味剤の開発研究の一環であり、その主眼を口腔内連鎖球菌の庶糖依存性平滑面対付着や粘着性グルカン合成を著しく抑制するキシロシルフルクトシド(XF)のグルコシルトランスフエラ-ゼ(G Tase)に対する阻害機作の詳細な解析、およびう蝕関連酵素に対する影響においた研究であった。そこで、Streptococcus sobrinus MT3791株の培養上清から非水溶性グルカン合成酵素(G TaseーI)および2種類の水溶性グルカン合成酵素(G TaseーSa,G TaseーSb)をクロマトフォ-カシング法により分離精製し、これらの酵素に対するXFの影響を酵素化学的および動力学的に解析した。その結果、これら酵素のXFに対するKi値はG TaseーIで0.3mM,G TaseーSaで0.05mM、G TaseーSbで1.0mMであり、XFの抑制機序は3種類全てのG Taseに対し、庶糖分解作用を拮抗的に阻害することによりG Taseのグルコ-ス転移反応を抑制し、結果としてグルカン合成、ひいては菌体の歯面への付着を抑制すると結論できた。また、XFの阻害の強さから、本糖質が庶糖との混合使用可能な新しいタイプの抗う蝕原性代用甘味剤の候補として非常に有力であることを示唆できた。そこで、本研究の当初の研究計画にはなかったが、ヒトロ腔内におけるう蝕実験系(ICT)を用いてXFの抗う蝕原性を検討したところ、予備実験ではあるが、XFが単独のみならず庶糖との共存(1:1)下においても庶糖によるう蝕を有意に抑制する結果が得られた。本研究はここまでであるが、そのため本来目的の1つであったう蝕関連酵素に対するXFの影響につき結論を得ておらず、この点が本研究の反省点であり、今後の課題としたい。
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