研究概要 |
特定の細菌が歯肉に直接あるいは間接的に作用し,歯周病の発症と進行に関与していることから,歯肉上皮細胞と細菌との相互作用を明らかにすることは重要である。歯肉上皮細胞の無血清培養については,MCDB153改良medium(牛の脳下垂体抽出液を加えたもの)に補助的因子を加えた培養系で,初代培養および2代まで継代培養が可能となった。細胞の培養と並行して,細胞の生物学的活性を測定する測定系を確立するためSCC9(ヒト口腔粘膜由来上皮細胞株)を用いて,A.actinomycetemcomitans A.viscosus,B.gingivalis,B.intermedius,C.spvtigena,E.corrodens,F.nucleatum.St.mutansの各超音波処理菌体凍結乾燥物を作用させ,細胞の増殖タンパク合成能,細胞傷害修復能を調べた。その結果,強い影響を細胞におよぼすグル-プI(A.a,B.g,C.s,E.c)と影響をおよぼさないグル-プII(A.v,B.i,F.n,St.m.)の2つに分けられた。グル-プIの超音波処理菌体に熱処理を加えた場合や培養液に加える血清濃度の影響を調べたところ,熱処理に対しては,B.g,C.s,E.cは熱に不安定であり,A.aは熱に対しては若干安定であることが示され,血清の影響に対しては,B.gは血清添加によってその活性は抑制され,A.a,E.cはかえって活性が増強される傾向がみられた。これらの事から各種歯周病原性細菌は上皮細胞に対して様々な影響をおよぼし,その機能の抑制作用にはおのおの違ったメカニズムが存在することが推測された。今後の研究計画としては,歯肉上皮細胞の無血清培養条件を整備し,数代継代が可能になるような条件を設定し,歯肉上皮細胞の生物学的活性の測定には,上記グル-プIの4菌種に限定し,それぞれの細菌に対して上皮細胞の産生すると考えられるPGE_2,ILー1β,ILー6そして酵素の産生について調べたいと考えている。
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