研究概要 |
特定の細徴が歯肉に直接的あるいは間接的に作用して歯周病の発症と進行に関与していることから、歯肉上皮細胞と細菌との相互作用を明らかにする事は重要である。ヒト歯肉角化細胞の無血清培養系を追求した結果、以下の条件で歯肉角化細胞を得ることが出来た。すなわち、歯周外科治療中に得た歯肉片から炎症部分および結合組織をメスにて切除し、健康な部分を使用した。得られたサンプルを抗生剤入りPBSで洗浄後、DispaseおよびTrypsin処理して、細胞を分散した後、Keratinocyte Growth Mediumに懸濁して培養を行った。角化細胞であることは位相差顕微鏡による観察と抗ヒトケラチン抗体を用いた蛍光抗体法で確認した。確立された培養角化細胞のPrimary cultureを用いて、歯周病原性細菌として重要な細菌であるActinobacillus actinomycetemcomitans超音波処理抽出物の多形核白血球を介しての細胞障害について研究を行い、併せて、種々のinhibitorを用いてそのmechanismを調べた。その結果、多形核白血球を細菌超音波処理抽出物と培養すると、歯肉角化細胞は細胞死を伴わない細胞剥離を起こすことが観察され、この作用は蛋白分解酵素のinhibitorで抑制されるが,catalaseやSODという活性酸素の消去剤では抑制されなかた。この事から、この障害作用は多形核白血球ライソゾ-ムの蛋白分解酸素による細胞死を伴わない細胞剥離と考えられた。本研究に用いた系は、歯肉溝内で起きていると考えられる歯周病原性細菌と多形核白血球および歯肉上皮細胞との相互作用を研究する上でin vitroの有力な実験系であると考えられる。今後は、この実験系を用いて、種々の刺激に対して歯肉上皮細胞の産生するPGE_2,Cytokine,酵素などの動態について解明したい。
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