研究概要 |
本研究においては,ヒトの頭頚部筋群の筋電図の解析とネコを実験動物として用いて電気生理学実験の解析結果とを有機的に結合させ,歯髄疾患あるいは歯周疾患に罹患に認められる筋筋膜疼痛性機能障害性症候群様症状の生理学的な神経機構の解明を行うことを目的としている。本年度の研究で明らかになった事項は以下の通りである。 1.基礎的実験:砂川はネコを実験動物として用いた基礎的研究により,下歯槽神経の電気刺激に対して応答性を示す頚髄ニュ-ロンを見いだし,それらのニュ-ロンの機能特性を検索した。昨年度の実験で,下歯槽神経駆動ニュ-ロンの中には,下顎犬歯歯根膜由来の入力を受け応答性を示すもの,マイクロスティミュレ-ションにより頚筋群の収縮を起こしユニット筋電図の測定ができるものなどが見いだせたが,本年度はこれらに加えて,より上位の投射中枢と考えられる視床に刺激電極を刺入し,その刺激により逆行性応答が得られるかどうかを検索した。その結果,合計15個のC2ニュ-ロンで逆行性応答が記録できた。この事実は頚髄レベルにおいても,三叉神経系からの求心性入力が上位中枢である視床に中継されることを示唆している。 2.臨床的実験:須田は,顎関節症状や頭頚部の筋に痛みを有する被検者と健常者の顎運動時の筋活動を,記録しその結果を解析した。また合わせてX線写真による歯ならびに歯周組織の状態を診査,口腔内の咬合状態などを診査した。その結果,顎関節症状を訴えている被検者では,単なる開閉口運動では筋電図上に異常が無くても食物を介した咀嚼運動時には,胸鎖乳突筋に健常者とは異なる活発な筋活動が認められることが明らかになった。
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