歯周病原性細菌の一つであると考えられているBacteroides gingivalis(B.g)より菌体内毒素(LPS)を抽出し、肝、心筋より調製したミトコンドリアに作用させ、ミトコンドリアの呼吸調節能を指標としその影響について検討した。対照としてE.coli LPSを用いた。また、歯肉への影響について検索する目的で実験動物イヌより歯肉を採取し、歯肉ミトコンドリアの調製を試み、以上のような結果を得た。 1.肝ミトコンドリアにE.coli LPS 30μ/mgを作用させた場合、ADP/0比32.5%、RCRは36.2%低下し、40μg/mg LPSで呼吸調節能は失われた。 2.肝ミトコンドリアにB.g LPS 150μg/mgを作用させると、ADP/0比35.5%、RCRは39.4%減少した。200μg/mg LPSで呼吸調節能は消失した。 3.心筋ミトコンドリアにE.coli LPS 25μg/mg作用させると、ADP/0比は20.0%、RCRは20.6%低下し、50μg/mg LPSで呼吸調節能は認められなくなった。 4.心筋ミトコンドリアにB.g LPS 1000μg/mgを作用させた場合、ADP/0比は30.5%、RCRは44.1%、減少し、呼吸調節能は1500μg/mg LPSの作用で認められなくなった。 5.歯肉より調製を試みたミトコンドリア画分の酸素消費量を測定したところ、呼吸基質や、ADP添加時に酸素消費量の増加は認められるものの、ADPを消費した後の呼吸が抑制された状態は観察されなかった。 現在、作用させる酵素の種類、温度および濃度について検討し、呼吸調節能を有する歯肉ミトコンドリアを調製すべく実験中である。
|